30代が始める歯列矯正経過記録【40】

本日は、遂に装置除去とリテーナーの装着。
朝一の9:30に入り、終了までおよそ2時間と長丁場になる予定だ。

実際のところ、3年間も共に時間を過ごした装置との別れに対して、感慨深くなるでもなく、もうそれほど時が経過していたのだなと、実感が湧かずにふわふわしている。

①装置を外す(割る)
目を閉じているので想像だが、おそらくペンチのような器具で装置を挟み潰すようにして割っている感覚があった。割るたびに『ゴッ』『ガリッ』という音と振動が伝わってくる。上顎下顎とも、側切歯の装置を割る時が、矯正始めたてのあの頃を思い出させるほどに痛かった。

②接着剤を削る
装置を除去した後、歯の側面に残されている接着剤を器具を使ってこそぎ取っていく。
開始前に「嫌な音がしますよ」と予告があった通り、ガリガリという音と振動がたまらなく気持ち悪い。側切歯以外は特に痛みはないものの、歯の表皮を鋭利な器具でガリガリ削られているような感覚に、体が強張る。

③接着剤を機械でゴリゴリ落とす
一通り器具で削った後、手動では削り切れない細かな接着剤を機械を使って落としていく。
歯の表面に当たると、顔に響く振動とともにゴリゴリと鈍い音がする。削るというよりは摩耗させるように表面を撫でていく。痛みはない。

④クリーナーを塗布し機械で研磨する
クリーナーを歯の表面に塗布し、③とは別の機械を使って研磨していく。こちらは特に振動もなく、音も静かだった。クリーナーはキシリトールのような味がした。

⑤コンディショナーを塗布する
最後に仕上げとして歯の表面にクリーナーを塗布する。研磨と違いあっさりとしていてすぐに終わった。軽く口をゆすいで終了。

次はカメラで写真撮影を行う。
診察台から近くの壁際の角に移動し、椅子に座る。顔の向きや口の開き具合を指示されながら、横顔、斜めに角度を付けた顔、正面顔、正面から見た歯、左右を向いた時の歯、を院長先生によりそれぞれ撮影されていく。

写真撮影と聞いて、今まで散髪してこなかったことに、非常に後悔した。
6月に予約していた美容院は、精神的な絶不調により当日キャンセルしていた。自宅から遠い場所にあるため今の状態ではとても通えず、地元の美容院を探すことにしたものの気が乗らず、3月から現在10月まで放置し続けていた。剛毛でくせが強いので伸びた髪は外に跳ね、髪の質はパサパサで、髪の下の部分は大ボリュームに広がっており、加えて黒髪なのでどっしり重く、自分で鏡を見ても「これは人が避ける」と思えるほど酷い様相なのであった。

羞恥心で気が重くなりながら、次はレントゲン撮影が始まる。
撮影室に入り、最初の機械は立ちながら、次の機械では黒いエプロンをつけて座った状態で撮影した。座った撮影は顔の角度が微妙だったため撮り直した。

診察台に戻ると、次は歯型取りが始まる。アルジネートが盛られたトレーを上顎に押し当てること30秒。下顎も同じく、下顎用トレーを押し当てる。

口をすすぎ、手渡された紙おしぼりで口周りについたアルジネートのかすを拭き取りつつ待っていると、次は下顎の前歯の歯型取りが始まる。
ピンクの長方形型のゴム板で、温かい。これを下顎前歯の裏に押し当て、残った部分をカチンと噛む。これは、歯の裏に接着するリテーナーの造形に使用するのだろう(恐らく)。

ここまでで多くの過程をこなしてきたが、遂にリテーナーの装着が始まる。
まずは下顎前歯の裏4本に、リテーナーを取り付ける。歯の裏に沿って造形されたリテーナーを、左右の犬歯に接着剤をつけて固定する。固定(硬化)は院長先生が行う。
硬化はライトを数秒当てるだけなのでさほど時間はかからず終了したのだが、スタッフさんが確認したところ片側が外れてしまっていたので、再度しっかりと固定してもらった。
もしまた日常生活の中で外れることがあったら、すぐに連絡してくださいとのこと。

最後に、上顎用の取り外せるリテーナーについて説明を受ける。
①1日中、且つ2年は使用する。
②食事と歯磨きの時以外に、外してはいけない。
③外した際に、リテーナーは専用ケースに入れて保管する。
④お手入れは、歯ブラシで軽くこする。歯磨き粉は研磨剤が入っていてリテーナーを傷つけるので使用しない。また、入れ歯洗浄剤も使用しない。専用の洗浄剤を使用する。
⑤痛い、ゆるい、合わない、壊れた、無くした時にはすぐに連絡する。

早速リテーナーの着脱練習をする。
口に入れワイヤーを軽く歯にかぶせたら、樹脂部分を奥(喉側)から手間に向かって押していき、ぴったりとはめ込んでいく。壊さないよう慎重になるゆえ最初こそ手間取ったが、その日の夜にはすっかり慣れた。
スタッフさんによれば、慣れてくると歯で噛んではめ込もうとする人がいるらしいが、必ず指を使って押しながらはめてほしいと言っていた。
また、歯磨きをする際に、下顎の裏の歯に取り付けたリテーナー部分は特に注意してほしいという。リテーナーのワイヤーと歯の隙間は磨き残しになりやすいそうで、その場合はフロスを通して磨くと良いそうだ。

次に、先程撮影したレントゲン写真を見ながら、親知らずについて説明があった。
上顎下顎ともに2本ずつ生えており、上顎の親知らずは普通の歯と同じく真っ直ぐ生えているので問題ないが、下顎の親知らずは奥歯の側面にぶつかるように真横から生えている。後々影響が出てくるかもしれないので、歯列維持の為にも抜歯が望ましいという。
しかし、真横に生えた親知らずは一般的な歯科での抜歯は難しく、大学病院でなければ無理ということで、近辺にある大学病院の紹介状を書いて頂くことになった。
基本的に回数を分けて抜歯することになるが、一度に4本全てを抜歯することも可能で、その場合は1泊入院するのだそうだ。
抜歯日時については特に決まった期日はなく、自身の予定のタイミングと合った時に実施すれば良いという。

この話を聞きながら、私の気持ちはズシズシと沈んでいった。矯正の過程で既に4本の抜歯を経験している。抜歯自体は大したことはないのだが、麻酔が切れた直後から1週間の地獄のような痒さと痛みと頭痛と熱っぽさで悶えていたことを思い出す。それに加えて、今回は大学病院でなければ無理という、明らかにこれまでの抜歯とは違うそれなりに大掛かりな施術を行うことは明白で、とても自ら進んで足を運ぶ気になれない。強制ではないものの、歯列に確実に影響が出るということであれば、嫌でも抜歯しなければこれまでの3年間の矯正が水泡と帰す。どちらにせよ、とにかく非常に憂鬱である。

11:16、全てが終了した。次回予約については変わらず1ヶ月後となる。リテーナー装着期間に入ったので、歯列の状態により予約が1ヶ月後、数ヵ月後と伸びていく。

会計窓口で、リテーナー説明時におすすめされた歯磨きで使用するフロスと、リテーナー洗浄剤を購入した。